Perfect lover
まだ自分自身でも良く解らない。私がまた、あの世界に戻ってきたのか、それともまだ意識だけがしぶとく、残っていようとするのか。 時折見える自然の景色は、いつも暗闇の中。別人格が居るように人が思案をするタイミングに限り、私の物で無い思想が頭に過ぎる。
それでも、私の意識が急に引き出される時がある。滅多に無い事だけれど、少しの、瞬間の出来事でしか無いけれど、視界の隅と気配に、懐かしいものを感じる。艶やかなエメラルドの、長い美しい長髪…。 私が意識を引き出される時、少なからずともその長髪の人物が視界にある。懐かしい気配も、その人から感じられる。思い出せないもどかしさに駆られていると、いつの間にか視界は閉ざされまた、暗い意識の中に。
まだ、数日も経っていない。この様な状況になってから。
黒い、魔導師の身なりをしている人物と、蒼く長い髪の格闘家。明朗活発な魔導師に、緑の魔女…。私の意識を宿す体が、幾度か目にする人物を表すとしたら、こうなる。それでも、緑の長髪の人物については、今だ良く解らない。誰かに意図的に理由があって伏せられているかの様に、薄ぼんやりとした何かに覆われていて、まるで知ってはいけない事の様に、それだけ綺麗に思い出す事が出来ない。
ただ、明朗な魔導師だけは、緑の長髪の人物よりも、私の視界の近くに映る。今まで一番意識を長く保ったのは、石造りの塔の書庫らしき場所に、緑の長髪の人物と二人で居た時。もうすぐで喋れると言う所で、押さえ込んでいた別の意識が戻ってしまった。それは私が作った人物の、多重存在の様。確か、『アルルのドッペルゲンガー』。
また意識が引き出された。今度の景色は、意識が一番保たれたあの塔。今度は椅子に座っている。
目の前に対面する様に椅子がある。薄開きの目を確実に開くと、今まで不鮮明だった景色が白日の下に晒された。真っ先に確認できる向かい側の椅子には、ずっと明らかに知る事が出来なかった、緑の長髪の人物が座っている。その瞳は明らかに私に向けられ、明らかに私に向かって声が掛けられた。
「お前は…、アルルのドッペル…」
「ルシファー!!」
目の前の、緑の長髪の人物、ルシファーが全て聞き終わる前に、私は先に身を乗り出しルシファーの名を叫んだ。途端に苦い顔になり封印の呪文の詠唱を始めると、私の意識はまた、暗闇に引き戻された。
酷く濡れた頬が泣きはらした目を想像させる。痛みのある喉が上げた声を思わせる。暗く戻った意識の中、悲しみと懐かしさの記憶だけは、はっきりと残っている。今でも思い出せば涙は溢れてくる。
ルシファー……。何故私を、何故私を拒んだの?苦しそうな、辛そうな顔をして、私を意識の中へ戻してしまったじゃない…。
『ねえサタン、今キミの事ルシファーって呼んだ人って誰だったの?急に慌てて魔法使ったよね?
ねえ、何で黙っちゃうの?ねえ、サタン…!』
『私は知らん…。でも見覚えはある。アルルはもう帰るんだ。私はドッペルアルルに用がある。』
『その中の人物にな……。』
後書き☆(一丁前―ッ!!)
お晩です、式瀧です。(ぇ)
貢物、完成しました。いえ、突発で書いたのでコレでよかったかと自分でも思うのですが、でもリリスを書いたの初めてでリリスのキャラが掴めずずっと苦戦しておりました…。
サタンがアルルを帰らせ、Dアルルの中に眠るリリスと何を話したかは(“話した“限定ですよ/笑)、優羅様のご想像にお任せしますvv
それでは失礼しました。 x-fragment 天蝎宮 式瀧